―――ハー舞オニーさんから頂いたロンハー小説
「まったく、君はいつもそうだな!自分はいつでも正しいような顔をして!」
「それはどっちよ!あなたじゃない!」
昼下がりのグリフィンドールの談話室。僕とハーマイオニーは、寮生達の「またか」
という視線の中、また喧嘩をしていた。
原因は、僕が課題も終わらせていないのにホグズミードに行くと言ったから。
「大体、課題をやってなくて怒られるのは君じゃなくて僕だろう?
何で君が僕に説教するんだ!大きなお世話だよ!」
「それは・・・課題をちゃんと終わらせずにフラフラ遊んでる人を見てたらイライラするのよ!」
「へぇ。シェーマスもディーンも課題、終わってないらしいぜ?何で僕にだけ言うんだ?」
「あなたは別よ!」
「何がどう別なんだ!」
途中、ラベンダーとパーバティーが「そりゃ、別よねえ」と意味深な笑いを浮かべながら
言っていたが、僕はそんなの気にしなかった。
そして次の瞬間、僕は決定的な言葉を口にしていた。
「良く分かった!じゃあ君だけ残って課題を終わらせるんだな!ガリ勉優等生さん。」
周りが息を飲むのが、今度は僕にもハッキリと分かった。
「穢れた血」の次に、彼女が最も嫌う呼び名。
みんな決して口にしない言葉。
誰よりもハッとしたのは、僕だった。
「・・・・・・・あ、あの、ハーマイオニー・・・」
「・・・・・・・分かったわ」
「いや、その、そんなんじゃなくて、えっと・・・」
「それならそれで結構よ」
僕を見上げたハーマイオニーの目に涙が溢れていた。
「ほっといて!どうせガリ勉よ私は!課題なんか気にしてるの、私だけなんですものね!
いいわよ、行けば?ご勝手にどうぞ!大体なんで私、あなたの課題の心配してるのかしら!」
謝ろうと思った。けど、出来なかった。
売り言葉に買い言葉が、長い間僕と彼女との習慣だったから。
とっさに僕も叫んでいた。
「やっと分かってくれたかい!じゃ、バイバイ!」
僕は談話室を出た。
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校門を出ようとする時、ハリーが言った。
「ロン、いいのか?あのままで。」
「知らないよ!僕のやろうとする事全てに干渉するんだからな、あいつは!
いちいちそれに従ってたら何にもできやしないよ!」
「それは。」
「え?」
「・・・・何でもない。でも、ハーマイオニーをあのままにしておくのは可哀想だよ。」
「僕の知った事じゃないさ!」
この期に及んでまだ強がる僕に、ハリーがとどめを刺した。
「ハーマイオニー、泣いてたよ?」
ニヤニヤ笑いながら「悪い奴だな、女の子を泣かして!」と呟いて、ハリーは歩き出した。
「・・・・ハリー。」
「ん?」
「悪いけど、シェーマス達に合流してくれないか?」
「どうしたんだい、急に。」
笑みを崩さずにハリーが言った。
「え、えーと、僕、今日は行かないことにしたんだ!残ってる課題、魔法薬だし、
スネイプに弱みを握られるの、嫌だからね!」
まさか「ハーマイオニーが心配だから残ります」とも言えず、僕は下手な嘘をついた。
「君ならそう言うと思ったよ。」
ハリーは言って、「シェーマス!ネビル!」と呼びながら前方にいる友達の方へ駆けだしていった。
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談話室に戻ると、暖炉の側にいるハーマイオニー以外には誰もいなかった。
近寄って見ると、ハーマイオニーは教科書を枕にして眠っていた。
教科書を開いている範囲がまだ習っていない箇所であるのを見て、
僕はやっと、「君は残って課題を終わらせろ」と言った自分が間違っていたことに気付いた。
良く考えてみれば、彼女がまだ課題を終わらせていないわけがなかったのだ。
ハーマイオニーの顔には涙の筋が付いていた。
泣き疲れて眠ってしまったらしい。
すやすやと眠る彼女の寝顔を見ながら、僕は隣の椅子に座った。
これからもずっと、僕たちはこんな他愛もない喧嘩を続けていくんだろうか。
これからもずっと、僕たちは一緒にいられるんだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・これからもずっと?
隣にいるのが当たり前だと思っていたハーマイオニーは、去年クラムとダンスパーティーに出た。
・・・・・僕じゃなくて。
何だか分からないけれど無性に腹が立って、彼女に八つ当たりしたっけ。
これからも、もしダンスパーティーがあったら、君は他の男と行くのかい?
嫌だ。
僕が決して認めようとしない心の声が、素直に心の奥底に響いた。
眠っているハーマイオニーの顔は、良く見ると結構可愛かった。
そんな顔を、僕以外の誰にも見せないで。
僕の側にいる時以外は、隙を見せないで。
・・・・・・・・・一体何を考えてる?僕は。
でもそれが、自分の素直な気持ちであることは、僕が一番良く知っていた。
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ハーマイオニーが、ゆっくりと目を開けた。
「・・・・・ロン?」
「ああ、起きた?」
「ええ。・・・・あなた、行かなかったの?ホグズミードへ。」
「あ、うん。課題も残ってたしね。」
「私が行くなって言ったから?ごめんね。私、あなたに干渉する権利なんかないのに・・・」
「いいんだ。僕も・・・・・・その、ごめん。ひどい事言った。」
「ううん、いいのよ。本当のことですもの。」
微笑む彼女を、僕は本当に可愛いと思った。
「そんなことないよ。・・・あ、もうこんな時間か。みんなが帰って来るね。」
「ええ。もうすぐ夕食だわ。顔、洗って来るわね。ひどい顔でしょうね、私。」
ハーマイオニーは女子寮への階段を上って行った。
この気持ちを、「恋」と呼ぶのかは、まだ分からなかった。
でも、僕の気持ちに変化が起きたことは、事実だった。
...END.
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ハー舞オニーさんから頂いたロンハー小説に絵をつけさせていただきました。
わたし、こういう微妙なびみょーーーな関係大大だいっ好きなんです!!
相手が気になる。。でもこの気持ちが何なのかわからない。。
なーんて初々しいんでしょう。思春期にしか許されないこのトキメキ♪
ロンとハーちゃんに早くくっついて欲しいと思う反面、
ずっとこの微妙な煮え切らない関係を続けて欲しいとも思ってしまいます。
素敵なロンハー小説、ありがとうございました。ハー舞オニーさん!
絵の説明をしますと、眠ってるハーちゃんをじっと見つめるロンの図です。
ハーちゃん、うっすらと涙の跡ついてるんですよ。
え?手抜き?いや、こういう色のついていないシンプルなのが
この小説には合うかな。。と思ったんですよ。(←言い訳)